最近あまりネタがなく,久しぶりの更新です.
プリウスもそうですが,i-MiEVには回生ブレーキがあり,アクセルを離すと電気ブレーキが作用し,モータを発電機として使い,運動エネルギを電気エネルギに変えて回収するようになっています.
鉄車輪の電車の場合,アクセルにあたるノッチを切ればひたすら惰性走行で,平坦なところなら2kmも3kmも走ることができますが,電気自動車の場合,鉄車輪にくらべ走行抵抗が大きいことと,今までの自動車との運転感覚の差を作らないためか,アクセルを離すとエンジンブレーキと同じくらいの回生ブレーキが作用するようになっているのが普通です.
そして,シフトレバー(新しいプリウスではレバーというよりスイッチですが)の操作で,回生ブレーキを強くできるようになっていて,それがBレンジです.
シフトをBレンジに入れると,ブレーキを踏んだのかと思うくらいの加速度(マイナスの加速度)を感じ,後ろに車がいれば驚かせてしまうかもしれません.制動灯は点灯しません.保安基準で,回生ブレーキだけのときに制動灯をつけてはいけないようです.(プリウスやリーフの場合は,ブレーキペダルを踏むと油圧と回生が協調制御で作用しますが,そのときは制動灯が普通に点灯します.)
電費をよくするためには,できるだけ回生ブレーキを使うこと,とよく言われます.では,実際に回生ブレーキはどれくらいエネルギを回収できるのでしょうか?
以前,世田谷から横浜の藤が丘まで国道246号線で往復し,そのときに「Ecoモード(加速時に出力を制限する)を使ったエコラン」と「後続車を若干引き離す程度の加速」で電費を比較したところ,エコランが7.78km/kWh(33km/4.24kWh), 高加速が8.42km/kWh(34km/4.04kWh)と,ほとんど変わらなかったばかりか,わずかながら高加速の方が電費がよかったという意外な結果でした.
今回は,「Bレンジを使わず,フットブレーキで停止する」という条件で,加速は高加速のときと同じくらいを心がけました.なお,実際にはDレンジでもアクセルを離すとBレンジより弱い回生ブレーキが作用します.
i-MiEVの場合,時速20kmくらいまではBレンジだけで十分減速します.(ちょっと弱いですが.また,下り勾配や多人数乗車の場合,Bレンジでは回生するけれども十分に減速しませんのでブレーキを併用することがあります.)しかし時速20kmの周辺で回生が失効するため,あとはブレーキを踏んで止まります.
電気ブレーキは速度が高い方が多くのエネルギを回収できるとともに制動力を確保でき,逆に低速ではあまり効かないはずです.(回転数が落ちると発電機の起電力が落ちるため.)最近の電車はかなり難しい制御を加えて止まる直前まで回生ブレーキで止まりますが,これはエネルギの回収よりも,多分にブレーキパッドの寿命を伸ばすといった目的が強いように思います.もし自動車でコスト的にそこまでの意味がないならば,一定のところで回生ブレーキを打ち切るのも1つの考え方です.運動エネルギは速度の2乗に比例ですから,低速域で回収できるエネルギは知れています.
さて,結果です.
高加速・Bレンジ使用の条件で8.42km/kWhだった電費は,一気に6.98km/kWh(34km/4.87kWh)に落ち込みました.距離あたりの電力消費は,一気に1.2倍ということです.逆にいえば,Bレンジをうまく使うことで(ただし実際には+α,後述します),電費を0.75倍くらいに抑えることができたということです.
では,回生ブレーキは本当にそんなに電気を回収するのでしょうか?この2回の実験は,同じ距離を走りながら,最終的な消費電力が0.8kWhも違います.Dレンジでも回生で回収しないわけでもありませんし,普通の走行パターンで5kmも6kmも走れるのに相当する電力を,本当に回生ブレーキの回収だけで浮かせているのでしょうか.
電車のように(札幌のメトロとか,ゆりかもめ線のようなゴムタイヤ式の電車はわかりませんが)惰性で2kmも3kmも走れるようなものと比べると,自動車は走行抵抗が桁違いに大きいため,消費したエネルギに比して回収できるエネルギは知れているだろうと思います.勾配などの条件が同じなら,同じブレーキで回収できるエネルギは初速だけで決まりますから,例えば60キロまで加速して直ちにブレーキをかけた場合と,60キロを維持して2km走ってからブレーキをかけた場合で,回収できるエネルギは同じです.しかしそれまでに費やしたエネルギには大きな違いがあります.実際の走行パターンを考えると,速度を維持するために費やしてしまったエネルギが多いのではないかと思うのです.
運動エネルギは速度の2乗と質量により計算でき,1.1tのi-MiEVが時速60キロ(16.7m/s)で走っているときに持っている運動エネルギは,1/2(1100[kg]×16.7^2)=152.8kJとなり,1W・sが1Jという定義から,1Whは3600J(3.6kJ)ですから,約42Whに相当します(さらに,i-MiEVは時速20キロ以下の部分を回収しないので,その分を切り落とすと37Wh程度になりました).しかしこれは純粋な運動エネルギで,走行抵抗で飛んでいく分もありますし,回生ブレーキで回収しようとすれば,さらにいろいろな損失が生じます.イメージとして,バッテリまで戻る分は半分もないのではないでしょうか.回生ブレーキの回数,速度パターンなどを考えると,電力量の差は回生ブレーキ以外にもあると思います.(上記の0.8kWhというのば充電時の損失を含んだ差なので,バッテリにその8割の0.64kWhがBレンジのおかげで戻っていれば,おおむね計算が合うのですが,本当にそこまで回収できているのでしょうか?)
私の推測ですが,回生ブレーキそのものが寄与したのは半分くらいで,残りの半分くらいについては,Bレンジを使わずに走ろうとすると,どうしてもアクセルで引っ張りがちな運転になるのではないか,ということが考えられます.(いや,それが普通の車の運転だ,といわれると反論できないのですが.)
回生ブレーキで回収できるエネルギが少なくなるのに加えて,より停止位置に近いところまで速度を維持してしまうことで,無駄なエネルギを使ってしまうのではないかと思います.
電気自動車に限った話ではありませんし,エコドライブの啓発文句によく出てくる話なのですが,電気や燃料を節約するためには,無駄な加速,特に再加速をしないことと,赤信号などでは早めにアクセルを離してしまうことです.(交通状況によっては難しい場合もありますが)
そのためには,前提として,車間を空けておく必要があります.車間が詰まっていると,前車の動きにあわせて頻繁にブレーキを踏むことになりますが,ブレーキを踏むということは,そのままエネルギの損失を意味します.環境に負荷をかけて得た運動エネルギを,今度は熱にして放出するのですから.
さらにいうと,車間を空けることは,安全にも直結します.特に高速道路上では車間距離不保持が原因の事故が深刻な問題になっており,最近高速道路上での車間距離不保持の行政罰・刑事罰が強化されました.
電気自動車の場合,一気に加速して,車間を空けて速度を維持し,少し手前から回生ブレーキで回収を図るというスタイルが一般的になるのではないかと期待しています.今まではお金の節約というイメージで捉えられがちだったエコランが(お金を払えば環境を汚していいわけではないので.お金の問題ではないのですが),電気自動車では「航続距離を伸ばす」というきわめて現実的な意味を持ってしまったわけで...
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