もう15年も前になりますが,「完全自殺マニュアル」(鶴見済,太田出版,1993年)という本が出版され,話題になったことがあります.
当時,この本は書店のどのようなコーナに並んでいるのだろうかと気になりました.
マニュアルだから「実用書」だろうか,いや,実用されたら困る.
「生き方」...いや,死に方を書いた本だし.(少なくとも表面的には)
「医学・医療」...医学書ではないし,医療の目的とは違うような...
しかし,たいていは人気書として平積みになっていたため,どこに並んでいるかを調べることはありませんでした.
そうだ,図書館ではどこの棚に並べているのだろう.図書館ではNDC(日本十進分類法)に基づき,本のカテゴリで分け,3桁~4桁の分類コードの順に並べているはずです.
というわけで,行きつけの世田谷区のOPAC(オンライン蔵書目録)で蔵書検索をしてみたところ,区内には蔵書がないようです.OPACで検索するとタイトルだけでなく説明文も検索対象になるため,「表現の自由と『図書館の自由』」といった本が引っかかるのですが,当の「完全自殺マニュアル」は出てきませんでした.
さすがに都立中央図書館では蔵書があって,そこでは「368.3」(368は「社会病理」)に分類されているようです.まあ,妥当な分類でしょう.もっとも,分類は出版DBにも記録されており,図書館が独自に分類するよりも,それを参考に分類しているものと思われるため,図書館ごとに分類が違うということはあまりないと思われるのですが.
それにしても,あれだけのベストセラーであり問題作になった本が,区立図書館で蔵書がないというのは,意外といえば意外でした.
せっかくなので都立図書館の「東京都公立図書館横断検索」で検索してみたところ,検索対象となった都下49区市町の図書館で,所蔵があるのは 杉並区,練馬区,豊島区,品川区,渋谷区,目黒区,中野区,文京区,江東区,葛飾区,町田市,あきる野市,立川市,多摩市,府中市,調布市,狛江市の17区市にとどまりました.開架で提供している図書館では,貸出中の割合も高いようです.
あれだけ売れた本が置かれていない図書館が多い理由は,まさか図書館で借り出された本を本当に使われてしまい,そのまま未返却になっている(警察経由で返却されてもさすがに貸し出せず廃棄になっている)という理由ではないでしょう.何しろ完全自殺マニュアルは100万部を超えるベストセラーになっているのですが,厚生労働省の統計(平成18年版人口動態調査・死因年次推移分類別にみた性別死亡数・率)によれば,1993年の付近で自殺が有意に増えている事実はありませんから,数字を見る限りでは「中には,そういう人もいたんだろうけど」という範囲です.むしろ1998年を境に突如増加したことのほうがはるかに重大です.
当時,いくつかの自治体では「自殺をそそのかす」という理由で有害図書の指定を行うなどの問題もありました.おそらく図書館にも「収集にふさわしくない」という圧力が議会や教委事務局などを通じてあっただろうと推測されます.実際,「完全自殺マニュアル」を閲覧制限した図書館もありました.しかし,公共図書館は設置者(自治体)からも独立して資料を収集することが使命ですし,このような判断は図書館の仕事ではありません.あくまでも利用者のニーズが高い本は棚に並べるべきであり,内容の価値判断は利用者各自に委ねるのが望ましいことはいうまでもありません.
えーっとね。
安部公房の箱男を、落ち込んでるときに読むと、簡単に自殺できますよ。
投稿情報: RYUIII | 2008/03/12 21:46
ありがとうございます.今度落ち込んでるときに読んでみます.
投稿情報: の | 2008/03/13 08:54