成人年齢を18歳に引き下げるという議論が本格的に進んでいるようです.民法では成人年齢を20歳と定めていますが,これを18歳に引き下げるとなると,公職選挙法その他の法令との整合性が問題となるので,いろいろな観点から議論を・・・ということになっています.
しかし,この話はもともと「国民投票法」や「18歳選挙権」をきっかけに浮上したものです.私は選挙権と民法の成人年齢を揃える必要はないと考えますので,なぜここで民法に話を広げるのかということについては,疑問に感じます.
民法の「成人」は20歳で,これは判断能力が未熟な若年者について一定の保護を加える(親権者に同意権・取消権を認める)趣旨のものと考えられます.成人することで「単独で法律行為(契約など)が可能になる」という権利的側面ばかりが理解されていますが,実際には「民法上の保護が外される」という側面も理解したほうがいいように思います.
なお,未成年者の婚姻には父母(のどちらか一方)の同意が必要であるものの,婚姻した未成年者は民法上の成人に達したものとみなされます.これは成年擬制といい,夫婦という社会における主体の自主性を保護するための規定といわれていたように思います.しかし,公職選挙法や未成年者飲酒禁止法では「20歳」という規定になっていますので,婚姻したことで選挙権が得られるわけでもなければ,飲酒・喫煙ができるようになるわけでもありません.
さて,「大人の入口」は20歳だけではないことについても,皆さん既にご承知のことと思います.
同じ民法の中だけでも,婚姻年齢(男18歳・女16歳)が代表的ですが,親族法の分野では遺言能力が認められる年齢,単独で(養親との間で)養子縁組ができる年齢,入籍届(婚姻届とは違います)などの届出人になる年齢(いずれも15歳)など,20歳よりも低い年齢による「境目」が広範に認められています.
また,刑事法の分野では,刑罰年齢(14歳),少年法による段階的な規定(12歳,14歳,16歳,18歳,20歳)もあります.刑法は事件当時14歳未満の少年による「犯罪」を責任能力がないものとして処罰しない(触法少年として少年法に基づく保護処分が行われる)ことはよく話題になりました.実際に刑罰が科される年齢は過去には16歳以上でしたが(家裁から検察官に送致(逆送)できる年齢を16歳としていたため),今はその規定がなくなり,14歳から公開の刑事裁判を受け,刑務所に送られる可能性があります.(さらに,16歳以上の少年が故意の犯罪により被害者を死亡させた場合は,原則として逆送することが規定されました.)また,18歳未満の少年には死刑を科すことができないこととなっています.これらのことから,少年法が「大人として保護の対象から突き放す」年齢は概して20歳よりも低いということができます.
その他の分野でも,労働法の年少者保護,風俗営業法,児童福祉法など,身近なところで心身の発達の度合いに応じた線が引かれ,基本的には年少者を保護するしくみが取り入れられているほか,自動車の免許の取得年齢の制限(免許区分によって16歳ないし18歳から)など,安全の維持の観点から一定の行為にある程度の成熟を求めるものもあります.
一方,社会等における一定の経験を有することが望ましいなどの観点と思いますが,被選挙権(参議院議員と知事は30歳,それ以外は25歳),特別養子の養親になれる年齢(一方が25歳以上,他方が20歳以上の夫婦)など,逆に高めのところに線が引かれているものもあります.
なお,心身の発達や社会生活上の経験という点においては個人差が大きいものですが,制度上は年齢が使われることが多いこともご承知のとおりです.
確かに,選挙権と成人年齢をそろえることについて,権利と義務が表裏一体であるから異なることは望ましくないという主張には説得力があります.しかし,納税の義務は年齢に関係なく生じます.それに,消費者取引が複雑化し,若年者を対象とした悪質商法も横行している中で,民法上の保護を緩めることについては,望ましいことでしょうか.
今回の議論は,選挙権の年齢と民法の成人年齢を切り離し,それぞれの分野において適切な境目,すなわち成人の年齢を議論すべきであると思います.
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