何を今さら,と思わざるを得ません.
年金納付金の着服により懲戒免職となった元職員について,刑事の時効が成立していない場合は地公体(地方公共団体)に促し,地公体が告発しなければ国が告発するという話です.
既に多くの自治体は「今さら告発せず」という方針を決めており,むしろ「告発する」という判断をしている自治体は少数にとどまっているようです.
金額の多寡にかかわらず着服が悪いことは当然で,そのような職員が懲戒免職の処分を受けたことも,至極当然の成り行きです.しかし,少なくとも当時の考え方においては,金額が多額でなければ全額弁済のうえ免職とし,刑事告発は見送るということが妥当とされていたはずであり,そのように運用されてきたものです.当時でも金額が多ければ告発され刑事訴追されていたのであって,社会情勢が変わったからといって当時のことを今さら蒸し返そうとするなど,およそ冷静な対応とは思えません.
免職されて5年も6年も経っていれば,そのことを反省したうえ再就職している人も多いと考えるのが自然です.その時点の社会情勢では刑事処分までは厳しいだろうとして告発が見送られていたところ,再スタートをした今になってそれを蒸し返されることは,いくら本人の着服が原因とはいえ,いくらなんでも公正を欠くのではないでしょうか.
そもそも,その当時に仮に告発されていたとしても,検察官が起訴していたかどうかは非常に疑問です.「被害金を弁済し,既に懲戒免職にもなっており社会的制裁を受けている.」と,まさに当時の市役所が判断した理由をもって,起訴猶予にしたのではないかと思います.しかし今になって告発されれば,(本来は当時告発された人との公平性を考慮すべきところ)今の社会情勢に鑑み起訴されることも多分に考えられるところです.そうなれば再就職していたとしても今さら蒸し返された事件によって職を失うことも十分考えられ,社会のためにどちらがよいのか正直わからなくなります.(少なくとも,告発を受けた検察官は当時同様の事件で告発された人との均衡を十分考慮した判断をすることが望まれます.)
公平性という観点からいえば,もし今回の件で告発された人が次々起訴されるような状況になったら,当時告発されたが全額弁償や懲戒免職を理由に起訴猶予になった人について,国は「地公体は検察審査会に審査請求をすべきだ」という通達を出すのでしょうか(制度上できるかどうかはわかりませんが).また,年金以外の公金を横領した人(国民健康保険の収納員などを含む)についても,地公体に告発させるのでしょうか.
このようなことを考えるだけでも,政治が何か1つのことを動かすためにはその影響や類似事案との公平性などの周囲のことをいろいろ考えなければならないのであって,それを怠れば拙速のそしりを免れないといわなければなりません.
マスコミは、
「社会保険庁職員の横領を告発していないとは許せん。」
「役場職員の横領を告発しろとは国の横暴だ。」
というダブルスタンダードには気づかないふりですな。
投稿情報: じょう | 2007/10/07 23:54
「国の官僚は常に悪い」「国は悪くて地方は正しい」という普段の主張を総合すると,こういうダブルスタンダードになってしまうんでしょうか?
それにしても,「処罰をするかどうかは告発の上司法の判断に委ねるべきだ」というのも本当は正しくなくて,起訴便宜主義のもと起訴の判断を委ねられている検察官は司法官じゃなくて行政官でしょうという話はさておき,横領は親告罪ではないのですから警察や検察は告発を待たなくても処罰の必要性ありと判断すれば捜査できるはずです.実務的に告発は犯罪捜査の端緒というよりも処罰を求める意思表示として取扱われており,全額弁済が済んでおり,さらに免職になっていることを理由に告発を見送った当時の判断は妥当といえるのでしょう.
投稿情報: の | 2007/10/12 15:04
結局、
刑事訴訟法の規定を引き合いに出すと、「官吏」は、「犯罪があると思料」した以上、「告発を しなければならない」=義務な訳でして…(ゴニョゴニョ
一方で、一度組織が決定というものを翻さない(一度告発を見送ったんだから改めて告発なんてもってのほか)、というのも、役人道として正しい姿な訳でして…(ゴニョゴニョ
ただし、大臣のお指図がいくら不適当なものであっても、適切な理由を後付けして実行するのも、役人道として正しい姿な訳でして…(ゴニョゴニョ
やってることは誰も間違ってないわけなので、余計にタチ悪いな…orz
投稿情報: じょう | 2007/10/12 21:58