鉄道関係の掲示板やSNSコミュニティなどで,管理者により「東京メトロ線内で撮影された映像は削除します.」という記載が行われていることがあります.なんでも,「東京メトロ線内では,交通営団の時代から撮影が禁止されている.」というのがその根拠だとか.
しかし,構内で「撮影禁止」の注意書きを見たことはありませんし,たまに珍客(誤解されるといけませんが,ここでいう珍客とは,千代田線の線路に有楽町線や南北線の電車が来たとか,ダイヤの乱れでほとんど見られない行先を掲げた電車が来たとか,そんな場合のことです.珍しい旅客のことではないので念のため.)を見かけたときにケータイのカメラやディジタルカメラで撮影していても,何らとがめられるようなこともありません.
この話,誰かが東京メトロに問い合わせを行い,見解を質したことがきっかけになっているようです.そのときの答えは,「運行業務への支障,他の旅客のプライバシー保護のため,当社としてはお断りしている.」というものだったようです.しかし,東京メトロは積極的にそれを呼びかけるようなことはしていません.それはなぜでしょうか.
駅を列車への乗降以外に使うためには,どこの会社でも許可が必要です.したがって,CMやテレビドラマの撮影などに使う場合には,事前に申請を行って警備計画や人員配置などを説明の上許可を受けてから行います.境目は明確ではありませんが,一般個人でも派手に三脚を組んでそれなりのカメラで撮影したければ,やはり許可を受けて行うことが必要だと思います.
一方,列車への乗降のために駅を使うことは乗車券さえ買えば誰でもできることになります.鉄道会社は旅客の運送を拒絶することが原則としてできないことになっており(鉄道営業法6条2項),運送を断ったり,「車外又ハ鉄道地外ニ退去セシムル」(←おもしろいので原文を引用します,同法42条)ことができる場合も限定されています.
従って,旅客が列車に乗ったときに写真を撮る程度の行為は,それが著しく他の旅客に迷惑をかけたり,運行の支障になったりするようなことがない限りは,制限のしようがない(家庭用カメラで撮影をしているくらいで駅からつまみ出すことはできないので,強制力がない)といえるのです.その他,駅のベンチで弁当を食べたり,スケッチブックを広げて絵を描く行為なども,結局はマナーを守ってやってください,ということに行き着くのでしょう.(支線にそれますが,ホームでバイオリンを弾き始めたら,凡人が弾いていたら「他のお客様の迷惑になるので」,高名なバイオリニストの場合は「聴衆が群がって危険なので」,やめてください,ということになるのでしょうか...)
東京メトロはこのあたりを重々承知しているでしょうから,わざわざ「撮影禁止」という貼り札をして,無用な摩擦(鉄道マニアからは「どういう根拠で」「根拠があるというなら退去せしめてみよ」といわれ,新型車両や珍客を見つけてケータイで撮影する一般人からは「いいじゃんそれくらい」と思われ,うるさい人からは「撮影禁止と書いてあるのになぜ制止しないのか」と苦情を受けるようなこと)をわざわざ生むようなことはしたくないのでしょう.
このようなことから,掲示板等の管理者はわざわざ過剰に反応する必要もないし,撮る側も迷惑にならないようにしていれば別に問題にならないのです.撮影について注意しなければならないのは,他の旅客を殊更に映さないことや,列車に向かってストロボを焚かないことでしょうか.特にストロボ撮影は運転士の視界に影響を与えて運行の支障になりますので,フラッシュがOFFになっていることを確認したいものです.地下鉄で列車に向かってストロボを焚いたら,それこそ「鉄道地外に退去せしむる」ということになっても仕方ありません.
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