小6と中3を対象とする全国一斉の学力調査(全国学力・学習状況調査)が4月24日行われ,合わせておよそ230万人の児童生徒が調査(試験)を受けました.
調査の内容は基礎的な学力が身に付いているかの実態を判断するもので,知識問題と活用問題が組み合わされ,一部には記述式の問題も取り入れられています.
結果の集計には相当の時間がかかりますが,どのような結果が出るかは大変興味深いものです.
結果は県ごとの数値を国(文部科学省)が公表し,それよりも細かい数値の扱いについては,各教育委員会に委ねられているようです.しかし,学校別の数値等について情報開示請求が行われれば,不開示を貫くのは難しいのではないかとの見方もあります.私も,児童・生徒数が極めて少ない場合などを除き,いわゆる情報公開法で定める不開示事由に当たらないのではないかと思います.
おそらく,同じ県内でも地域により,同じ市内でも学校により,極端な差が出るような状況,そして,それが公になることによる保護者の混乱(学校選択制が実施されている自治体では,顕著に現れる可能性があります)を避けたいというのが,文部科学省や各教委の考え方なのではないでしょうか.
すでに「成果を出している学校」「学校選択制で選ばれている学校」に予算を重点配分するなどという話も耳にするところであり,現場や保護者は戦々恐々なのではないかと思います.
調査の結果について不開示を貫けないという前提で,私もやはり地域差や学校差がくっきり生じるのではないかと予測しています.私の時代で,中学3年生が受験するいわゆる「業者テスト」では,学区内での偏差値を都下一律の偏差値に補正する値には4の開きがありました.(学区によって,学区偏差値に2を加えるところから2を減ずるところまでありました.つまり,各学区の偏差値が50の生徒でも,都標準に直すと48~52の間に差がついてしまうということです.)また,公立中学の中で高校の進学実績や平均的な成績に差がついており,「人気の中学」があることも,すでに知られている事実です.
生まれ育った地域,家庭の経済力など,本人の努力や能力と関係がないことによって,受けられる教育の質に大きな差が付くことは,避けなければならないことです.例えば世田谷区では「3割が私立中学に行く」といわれていますが,そこにはやはり「公立不信」が相当あるのではないかと思われます.本来公立で十分なのであれば,何も3割もの人が高い授業料を払って私立に入れる理由はなく,ここにはやはり経済力による機会の不平等が生じてしまうことになります.そのような状況下では,家庭の経済的理由により教育の機会が制限され,さらにそれが次の世代にまで固定化してしまうことを真剣に恐れなければなりません.
全国学力調査の結果は,このような不平等を埋めるためにこそ活用されなければなりません.結果を正直に受け止め,学校別・地域別の差が出た原因は何か,それを埋めるためにはどのような方法が取れるのかを,現場と政府が一丸となって着実に検討し,継続的に改善する必要があります.
昔から言われていることですが,「日本は資源がなく,人材だけが競争力である.」このことは今も全く変わっていませんし,今後も変わりません.また,日本の産業の振興には国民全体の水準が高いことも重要です.そのためには,公立校の底上げと格差の是正こそが必要なのです.
学力調査に対する保護者や現場の不安は,結果に格差が見えてくる,しかしその先が見えてこないことに由来すると思います.
今文部科学省や教育委員会が行わなければならないのは,現状をきちんと国民に説明し,学力調査で結果が芳しくなかった学校は重点的な対策で底上げを行うことと,家庭の経済力に関係なく能力さえあればそれに見合う教育が受けられることを改めて保障することではないでしょうか.必要なことは学区の公立に安心して行けることであって,もし成績のよい学校や「人気校」に予算を重点配分するというのであれば全く逆です.
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